フロイドの色々

「会議道」

平成3年に書かれた社説

日本の伝統的文化である茶道とか柔道を知らないアメリカ人は少ないと思います。日本の色々な「道」は世界の中で唯一のものでしょう。なぜかというと茶道でも弓道でも、いずれもそれぞれのやり方は完全に決まっていて、日本国内のどこへ行っても、大体同じ形を見ることができます。それに、アメリカ人と考え方と違って、日本の「道」のやり方には結果よりもその型を正しく行うことが重視されるみたいです。例えば、弓道では矢が当たらなくても弓を射る型をうまくやれば「OK」だと聞いたことがあります。結果より型が重要なのか?面白いです!

だから、南郷町に着いてから(前年の八月(平成2年8月))このような文化深い「道」をひとつだけでも勉強しておくことにしました。しかし、一つの問題が出てきました。というのは、あいにく、ひとつの「道」をうまくやるのに何年間もの練習が必要であると分かってきました。

そして、私の南郷町滞在期間は長くてもわずかの3年だけだったので、どうやら無理だなぁと思うようになりました。本当にがっかりしました。 でも、ある日、やっとひとつの日本の唯一の「道」に気がついて、勉強しはじめたのです。この「道」だったら、2〜3年間だけでもマスターできる自信があります。

少し説明しておきましょうか。

私は南郷町の国際交流員として、様々な行事に参加する機会があって、日本の会議のやり方が大体分かるようになりました。でもね、不思議な点がありました。というのは成人式、PTA集会、反省会(つまり、「飲み方」)等、つまりどの会議のやり方を見ても、そのやり方は全くおなじなのです!

又、大人の会議であっても、子供の会議であっても、人数が多いが少ないかにもかかわらず、そのやり方は変わらないのです!

従って、これらの経験によって、まさに日本では「会議道」という型の完全に決まっている「道」もあると思い初め、会議道のやり方を熱心に勉強してきました。

皆さんは会議道のやり方ご存知でしょうか。ちょっと復習してみましょうか。

  1. 開会のことば(二番目の偉い方)
  2. 開会のあいさつ(一番偉い方)
  3. 第一はなし(時々「第一つまらないはなし」とも呼ばれる)
  4. 第二はなし(時々「第一つまらないはなし」とも呼ばれる)
  5. 万歳三唱(おじいさんっぽいの方が指導する)
  6. 閉会のことば(皆さんが待っていることばでしょう!)

なお、これらの段階は基本的なのだけで、会議道の名人(五段か六段)の会議だったら、十二段階以上のをうまく織込んだ会議も別に例外でもありません。 でも、気を付けてね!一般のルールとしては会議の段階の数が多ければ多いほど退屈になる可能性が高くなります。

確かに会議道は日本にしかない「道」であり、私みたいな外国人にとって、現代の日本の文化の勉強してはいけないものだと思います。

そして(手前味噌ではないけど)、実は私がわずかの八ヶ月で会議道の三段まで頑張ってきて、五段・六段を目指しています。やっぱり、その高い目標を達成するには努力しなくちゃと分かっているけど、私は普通の人よりも恵まれていると思います。なぜかというと、私は役場で勤めているからです。役場の職員のうち、会議道の名人が大勢いて、いつもお世話になっています。

しかしながら、私には一つの超弱点もあります。それはつまらない話をするのがなかなか難しくて、うまくできません。この欠点があるので、役場に勤めているわずかの数年間だけで会議道の名人になれるかなぁ?

まあ、頑張るしかない!

c1992, Louis A. Floyd