1997年10月の話題

サメ軟骨からの精製物スクアレンが「癌に効果のある」健康食品として売られています。実験的には,癌の血管増殖を抑制する効果があります。

アメリカの臨床腫瘍学会で発表がありました。進行癌患者に0.5gカプセル100個分を毎日与えましたが,まったく効果はありませんでした。健康食品は愚かなことであるというのは私の前からの主張です。

プルーンの濃縮物も健康食品として売れているようです。植物中の鉄は吸収しにくいので,動物性食品から摂取するべきとは思いますが,果実自体には鉄も多く含まれており,悪くはないと思います。
以前のデータですが,乾燥プルーンで「カリフォルニアの天日で干した健康な食品」との宣伝がなされていました。ところが,天日で乾燥は事実上できないそうです。暑さで,下側になった部分から,すぐに腐ってしまいます。ではどうやったのでしょう。腐敗防止と虫除けのために,たっぷりと消毒薬と殺虫剤をふりかけて,天然の天日で干していたのです。「健康食品」「天然自然食品」の裏側にはこういうこともあります。むやみに飛びつかないほうが安全です。
「天然の」色素には得体の知れないものがあります。赤の色素で南アメリカの毒虫の殻(キチン質)から精製したものもあります。天然であるので規制は受けませんが,だれもその安全性を証明していません。「天然」「自然」イコール「安全」ではありません。「天然」「自然」の発癌物質も多くあります。

コーヒーを毎日3杯以上飲むと大腸癌になりにくいという報告が出ました。
豆には油や蛋白質が比較的多く含まれています。
1.油が酸化して,過酸化脂質ができて,発癌性が出る。
2.蛋白質の焼け焦げができて,発癌性がでる。
コーヒーは以上の点から,以前より発癌性の疑いがかけられ,統計の対象になってきました。理論的には悪いはずですが,事実は逆です。文明の発達した地方で,1000年単位で人類が使用してきたものには,安全なものが多いようです。同じ様なものにホウレンソウがあります。理論的には,亜硝酸が多く,胃でニトロソアミンを生成し,発癌が増えるはずですが,実際は増加はみられません。どちらも,それらにも増して癌抑制物質が含まれていると考えられます。薬も含めて,完全に安全な食品というものはありません。相対的なもので,害より利益のほうがずっと多いなら使用するべきです。お茶の癌抑制作用は良く知られています。

メラトニンは,先のとは逆で最近人類が使用しだしました。医学的には,睡眠障害の効果も含めて,一切良い効果は認められていません。大量に使用して,そのうちに,副作用がでてから後悔しても遅いので,もう少しはっきりしたデータが出るまで使用しないほうが賢明です。安全と言われ,大量に使用され,その後大きな副作用が問題になったものにアミノ酸のリジンなどがあります。メラトニンもアメリカで健康食品として扱われ,医薬品でないのも問題です。

ヨーロッパとオーストラリアを中心に,プロポリスが流行しています。プロポリスは蜂が巣の壁に塗るものです。カビよけの効果があります。蜂が壁に塗る薬剤を人間が飲んで,なんらかの神秘的効果を期待するのはばかげています。

再掲
ボルボがヨーロッパの衝突安全性実験で優秀であったと宣伝しています。同じ試験で安全であったのは日産プリメーラでした。Audiが最低,ほとんど最下位に近いのがBenz C-classでした。日産は最近型を新しくしたので,宣伝できないのでしょう。型が新しくなると,かえって安全でなくなるのはよくあることです。
以前私が参考にしたのは "The Car Book" HarperPerennial です。どの車が安全か一覧表で簡単に解るようになっています。日本の消費者の意識がまだ低いので,このような便利な本が日本にないのは残念です。日本でも衝突安全性試験が行われるようになりましたが,どの車でも合格するような低いレベルの試験で,「日本の車は安全だ」と宣伝するために行っているようなものです。車は高額で長く使うものですから,先の本などでよく調べてから購入されることを勧めます。丸善で取り寄せてくれます。なお,時速100Km以上ではシートベルトの効果も確実ではなくなります。しかし,ダイアナ事件で,シートベルトをしていたボディーガードだけが助かったのは象徴的です。京都のシートベルト着用率は全国最低です。子供は後席でチャイルドシートで固定します。エアバッグは子供にはかえって危険となります。首に大きな力がかかるからです。  1997.09.27

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