在宅中心静脈栄養移行時の要望 1  雑菌が混入しやすいので,除菌フィルターより下流では,チューブに対する処置を行わないのを原則とする。同様の理由で,延長チューブなどを接続するのは避ける。

2  エアー混入などで点滴セットに注射器を接続したり,混注をするときに,Y字管等のゴム栓をはずすと感染の機会が増える。ゴム栓をイソジンで消毒し注射器の針を刺入する。数回の刺入には耐えられる。三方活栓も感染の危険が多く,避ける。頻回になり,必要なら三方活栓の代わりに,I−セットPタイプを用いる。

3  ヘパリンロックを行うには,感染および血栓防止のために,I−システムは必須の手技であり,三方活栓やそのプラグ等を流用してはならない。I−システムは学会の標準とする手技である。感染および血栓防止のために,院内に周知徹底させる。

4  IVHに関しては,専任の看護婦を養成し,在宅静脈栄養研究会などで講習を受けさせ,院内のIVHの指導に当たらせる必要がある。学会の動向や器具の向上にも注意させ,院内や在宅での手技の普及に努め,院内感染防止等をはからなければいけない。在宅患者の退院時指導にもあたる必要がある。

5  在宅療養者や家族へ清潔の概念を十分指導する必要がある。看護婦でさえ知識が十分か疑問を感じる。
@不潔創のピンセットで綿球等をさわらせず,イソジン綿球などは 清潔のピンセットで一度とってから,処置用のピンセットにわたす。イソジンのなかで,雑菌が繁殖し,重大な院内感染を起こした例がイギリスである。消毒薬は万能でない。
AIVH等清潔を要求される処置の前には,手洗い後イソジンパーム等,MRSAに準じた方法で手指消毒を行わせる。また,専用のイソジン綿球やピンセットを用意し,感染創,褥創やストーマ管理と兼用しない。
B氈j無菌的処置 )清潔処置 。)感染はないが常在菌の恐れのある処置 「)感染創 等の部位の区別を指導し,菌の存在部位を明確に教えておく。また,この順番に処置を行うよう教育すると感染の機会を減少できる。
6  薬品以外の材料・部品は特約代理店契約などのために,特殊なルートでしか手に入らない事がある。ほんの小さな部品でも,必須の部品であれば,その1個のために全体の処置ができなくなり,患者が非常に困難な状況ににおちいることを考慮しておく。在宅医療移行時には病棟看護婦はあらゆる部品・材料をリストアップし,メーカー名と入手先を確認して,患者に手渡すとともに,在宅医療の主治医にも連絡するのが必要なルールである。実際の調達は主治医を通じて行うことが多い。
7  在宅で処置の必要な患者は,病棟から直接帰宅させてはいけない。必ず病院内の在宅医療担当者に,余裕をもって連絡してから退院させる。


インジェクションプラグ(IP−2)の保護 インジェクションプラグは長く使用するので,使用しないときはできるだけ保護するようにしている。フィルターセットの連結用ロック付Y字管の部位に,滅菌済みの保護用キャップがついている。これは,毎回使い捨てにできる。ヘパリンロック時にはこの保護キャップをはずし,インジェクションプラグをイソジンで消毒して,乾かないうちに保護キャップをねじこんで,次回使用時まで保護しておくと清潔でよい。入浴などは,この上をカテリープでさらに,濡れないように,保護しておく。次回使用時には,乾いたイソジンをていねいにアルコールでふき,さらにイソジンで消毒して,フィルターセットを連結する。
参考文献

1 静脈栄養・経腸栄養ガイド Medical Practice 臨時増刊号 vol.10 1993 文光堂
2 在宅中心静脈栄養法マニュアル(これは必読です。学会の最新情報が解ります。無料で送ってもらえます。) 非売品 問い合わせ先 大阪大学小児外科 tel 06ー879ー3754 fax 06ー879ー3759 Japanese
3 カラー版よくわかるスキンケアマニュアル エキスパートナースMook15  穴沢貞夫・大林裕子 発行 照林社 発売 小学館 

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河合 尚樹