痴呆薬効果無しの報道

痴呆薬検診一部効果無しの報道がありました。当然の結果です。厚生省の愚かさがまたひとつあきらかになっただけです。
ほとんどの論点は癌検診無効の話題に重なります。大学教授を製薬会社,検診を薬品に置き換えて読んでいただければ,ほぼ同じですので,繰り返す必要は感じません。 なお,薬の開発に関係した大学教授などが薬事審議会の委員になる場合があり,中立性に疑問のある場合があります。

朝日新聞によると,「こんな事では,厚生省の信頼は,海外から評価されなくなる」とのことです。厚生省を信頼しているなどとは,厚生省の課長クラスからのいい加減な情報で,裏付けもとらず,第一面に医師攻撃を行う新聞社ぐらいなものです。AIDS情報の隠蔽をすぐにあばいた管 直人氏はいまや大人気です。国民で厚生省を信頼している人はほとんどいないでしょう。ましてや,海外で日本の厚生省はまったくばかにされており,信頼などされていません。厚生省を尊敬しているのは朝日新聞くらいなものです。こんな,現状認識で論説を書けるとは,新聞社とは気楽なものです。もっと裏付けをとりましょう。

朝日新聞は,「薬品会社の謝罪の言葉もない」とお怒りのようですが,自身のいいかげんな報道に「訂正謝罪の記事もない」のとの整合性はどうなるのでしょう。会社は営利企業であり,少しでも効果のありそうなものがあり,国のレベルが低く,役所の審査がずさんで,その国で売れそうになるなら,どんどん販売攻勢をかけてくるのは当然です。これが,自由競争というもので,製品が良くなければ,その製品は淘汰され市場から消え去るのみです。そこに役所の裁量行政,規制介入があるから,市場は歪んでくるわけで,非難されるべきは,そんな薬を排除できなかった厚生省の審査でしょう。企業に倫理を求めるのは無理というものです。企業に倫理を求めるなら,朝日新聞という企業の「言論」という製品に欠陥のあった場合,すぐさま訂正するのが倫理というものです。

企業と規制に関して,ついでに,私の少ない知識で知っているものをあげてみましょう。
造影剤でショックがまれに起こるので,西欧先進国や日本ではより副作用の少ない,高価な非イオン性の造影剤にほぼ置き換わってしまいました。製薬会社がすぐに古い薬の製造をやめたでしょうか。そんなことはありません。規制のほとんどない,しかも金をもっているアラブ諸国を中心に輸出されています。命の価値に国境が関係します。 

スイスのネスレは,衛生観念の低いアフリカに大量の粉ミルクを売りつけました。宣伝をテレビで大々的に行って,母乳よりよく育つかのような誤解を与えました。田舎で,不潔な水で粉ミルクを溶いたので,乳児死亡率は急上昇しました。民間団体の抗議で,母乳の方が良いと認めました。

日本の薬は世界一高価であるのは最近,一般にも知られてきました。厚生省の規制,ルールがころころ変わる裁量のおかげです。

富士フイルムのレントゲン用フィルムは優秀ですが,アメリカで買ったほうがずいぶん安く買えます。

横河ヒューレットパッカードの超音波装置はOEMでGE製として世界に供給されています。イタリアでは実売価格180万位だとの報道がありました。日本では定価が950万くらいします。実売価格は半値以下ですが,それでも,世界で一番高いほうです。国立病院ではほぼ定価で買っているものと思われます。差額は,選定の役人接待の裏金の資金に使われるのでしょう。

電気安全性試験,医療機器としての安全基準等の規制を通らなければいけないのも,一つの理由です。規制がないと安全が保証されないと厚生省は主張します。しかし,安全でない機械を製造して訴えられたら,企業はつぶれてしまいます。厚生省の規制をなくしても,そんなに危険なものが出回るとは考えられません。それが自由競争というものです。安全性審査機関を作り天下り先確保が目的でしょう。世界一高い製品を買わされて,その費用で役人天国が続くわけです。

病院給食の食品に認定制度がありました。改善されたのはごく最近です。認定機関が天下り先でした。

自由競争とは,しっかりした消費者でないと,とんでもない目にあわされかねないという事でもあるようです。しかし,競争による淘汰という利点もあります。


1998.06.01
http://www.geocities.com/kawaiclinic
〒6050842 京都市東山区六波羅三盛町170 河合 医院

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