にがりで死者が出ています。


  

 

 

 


にがりは、豆腐の凝固剤として有名です。海水から塩を作る副産物です。
しかし、最近これを便秘の治療に流用したり、天然物なら何でも「健康にいい」と服用するのが流行しているようです。天然ミネラル・にがりドリンクなるばかげたものも売られています。下痢をすることから、「ダイエット」と販売している業者さえいます。儲かりさえすればよいという業者が多いようです。
主成分はマグネシウム カルシウム カリウムです。

確かにマグネシウムは医師も安全な下剤として使用しています。しかし下剤として、医師の使用する「マグネシウム」はクエン酸マグネシウム・酸化マグネシウム・水酸化マグネシウム等で、いずれも水に溶けにくい形の製剤です。体内に入ると炭酸または重炭酸マグネシウムに変化し、これも腸管から吸収しにくい形です。

多少のマグネシウムは吸収されますが、微量であり、さらに過剰なマグネシウムは腎臓からすみやかに排出され、医師の処方のマグネシウムで副作用はまずありません。きわめて安全な便秘薬です。
しかし、腎機能が衰えていると、排出が遅れマグネシウム過剰症となります。

マグネシウムはカルシウムイオンと拮抗的に働き、筋肉の収縮を阻害します。このため、少しマグネシウムの多い人のほうが、不整脈や心臓発作は少なくなり、心保護に役立つのですが、過剰に摂取すると筋肉が収縮できなくなり、心停止や筋肉壊死から死亡します。

正常な高齢者でも、腎機能は低下していることが多く、マグネシウムの排泄が遅延します。特に注意が必要ですが、高齢者には便秘が多く、利用する人も後を絶ちません。実際神奈川県では、小さいペットボトル風の容器に入ったにがりを服用し死者が出ています。
子癇のけいれん時にもマグネシウムを静脈注射しますが、筋肉のけいれんを取るためです。このときマグネシウム中毒に注意する必要があるのです。

先ほど述べたように、医師の処方するマグネシウムは、難溶性で急速に吸収されることは無いので安全ですが、一方「にがり」は無色透明であることからわかるように、初めから溶解しており、急速に吸収されると考えられます。このため、急性マグネシウム中毒から、筋肉融解壊死や心停止を起こしたものと考えられます。カリウムも多く含まれており、腎機能低下時には同様にカリウム過剰摂取で死者がでる可能性があります。初期の症状は筋力低下による脱力感です。

長年マグネシウムを便秘薬として処方してきました。マグネシウムは下剤としては弱いほうで、大量に使わないと効果は無いものです。しかし、他の刺激性下剤(コーラック・漢方等)は刺激に慣れが生じ、量が増えます。このため、腸が荒れてきて大出血をきたすことさえあります。弱いとはいえ、安くて安全なマグネシウムは長期連用に薦めています。
しかし、にがりを正当な使い方をしても、医師の使う量からいえばきわめて微量で、効果が出るとは思えません。

溶けて吸収されたら下剤としての効果はありません。腸管内で水をひきつけている必要があるからです。難溶性だからこそ効果があるのですから、これからも下剤としての効果はほとんど無いものと考えられます。もちろん、一部過敏な方は下痢をするかもしれませんが、「インチキ抗癌食品」で癌が消えたというのと同じです。
ダイエット効果をうたっていますが、毎日医療用のマグネシウムを服用して、やせた患者さんは見たことがありません。にがりよりもずっと大量摂取なのにです。簡単なら、糖尿病に使います。インチキと断言できるでしょう。ダイエット効果が無いのは私が保証いたします。下痢が続けば少しはやせるでしょうが・・・。それなら、急性マグネシウム中毒で死亡する危険と引き換えでということです。又は、微量元素吸収障害、・ビタミン類吸収障害による健康障害が代償です。にがりによる、安全なダイエットはありえないことです。

腎機能によっては、100ccあまりで死者が出るのですから、劇薬に指定されるべきものですが、「健康食品」や「食品添加物」として安易に金儲けの対象にして、大量販売されているのが非常識です。

微量のマグネシウムは必須ですが、大陸とは異なり、正常な食生活で、のり・昆布出汁など多少の海産物を摂取する日本では、欠乏はまず考えなくてもよいでしょう。摂取する必要などありません。むしろ過剰が大問題です。

「天然なら何でも安全」なわけではありません。にがりの服用はやめましょう。

Appendix.マスコミとの関係
さて、朝日新聞はにがりの危険性に対してほとんど無視です。にがりは「ダイエット」目的や「便秘薬」、「健康で安全なミネラル」としての販売を禁止し、業務目的のみに販売限定すべきものです。家庭で豆腐が作れなくなっても実害などありません。死者が出ても、「販売禁止」を朝日は叫びません。

一方、ほとんど確実に死に至る病の治療として、医療がイレッサを使って副作用死が出れば大騒ぎで、「製薬業界の不正」や「医療攻撃」を大規模に行い、「イレッサ廃止」を叫んでくれます。インフルエンザ予防接種廃止でも同じように医師攻撃です。イレッサや予防注射での副作用死はきわめて低率ではありますが、避けられません。その一方、巨大な有益性もあるのは事実です。「にがりの副作用死」には何の利益が付随するのでしょうか?ダイエットのインチキ効能の金儲けで死者が出ているのに、なぜ朝日新聞は、「にがり攻撃」キャンペーンを行わないのでしょうか?
特殊なお考えがあるようです。

朝日新聞の北朝鮮礼賛キャンペーンを信じて、「北朝鮮への集団帰国」を果たした方々の運命は・・・・。一部の狂信的な発言者を信じて、キャンペーンをはるのはインフルエンザ廃止論と共通点が見られるのです。信じた者の運命は上記のとおりです。同じ事を何十年も繰り返すのが朝日です。
医療攻撃キャンペーンに関しては、検証などされません。拉致被害者を、朝日は長年無視どころか、逆に攻撃・邪魔者扱いさえしてきたのですから。北朝鮮礼賛キャンペーンも、真実が明かされ、拉致被害者が執拗に抗議をして、何十年もかかったのですから・・・。
マスコミの信頼性の問題です。真実や科学的、公正さとは無縁の世界です。健康に関しても同じなのです。

2004.8.1
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初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹

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