肺炎球菌ワクチンの再投与問題


  

 

 

 

最近マスコミでもよく肺炎ワクチン投与が良いと勧められています。どんどん接種してください。結構なことです。

そこでの説明で、「5年(くらい)は効果が続きます。」との説明がよくなされます。

当院で肺炎球菌ワクチンを接種しだしてから7年くらいたちました。そこで、「5年たったので、そろそろ再接種をお願いします。」との依頼がよくあります。

これは大きな誤解なのです。

「5年(くらい)は効果が続きます。」との意味の説明がマスコミでは不十分だからです。

なぜ、5年なのでしょう。

理由は
1.もちろん効果は5年以上は続くという意味です。5年から10年は効いています。しかし、それ以上いつまで効果があるかは実証するデータはありません。
2.数年以内に再接種すると、一部の人は腕が腫れます。(しかし、重大なことではなく、死んだり切開したりという重篤なものではありません。冷やしていれば治癒します。)
これが「5年(くらい)は効果が続きます。」という本当の意味です。

それでも、5年以上たつと抗体価は下がってきます。それなら、再摂取すべきなように考えられます。
しかし、これにも実証的データが無いのです。最近始まった制度だからです。

抗体価が低くとも、感染すると体の反応が速やかに再現し、防御力が十分存在することもあるのです。検査データだけで予測不能の部分があるのです。

さらに厄介なことに、ブースター効果が肺炎球菌ワクチンには無いのです。
ブースター効果とは、日本脳炎や百日咳のワクチンのように、繰り返して予防接種を受けると徐々に抗体価があがっていくことをいいます。肺炎球菌ワクチンを再接種しても、抗体価はあがらないそうです。再接種は血液検査で効果が実証できないということですし、再接種よる予防効果も証明できないのです。

重要なことは、「だから再接種すべきでない。」という科学的根拠もまた存在しないということです。 再接種して悪い効果もありません。

しかし、国(アメリカ)としては、効果がはっきりしないものを税金を使ってまで推奨するわけにもいきません。

ただし、アメリカもハイリスクの人には勧めています。肺気腫や結核の既往等で危険性の高い人は再接種すべきでしょう。また、初回が65歳未満で接種された人にも、再接種が勧められます。

元気な老人には、今のところ、再接種を勧める根拠がありません。しかし、してはいけないという根拠もありません。自費で行う自由はあります。


2007.4.1
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初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹

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