脳障害とスポーツ

メディカルトリビューン 1999年12月9日より

アメリカンフットボール選手の神経心理学的検査を393名に行った結果です。
1回だけまたは,脳震盪の経験のない選手にくらべて, 何回も脳震盪を起こした経験のある選手は,記号数字モダリティー検査(SDMT)における情報処理が遅く,他の神経生理学的検査においても,精神的柔軟性の低下,注意力の能力低下を示しました。研究者は脳の回復率が事故が起こる度に低下するとしています。
アメリカでは毎年63000件の軽度脳外傷が発生しているそうです。
アメリカでの発生率はアメリカンフットボールが63% ,  レスリングが 10.5%,少女サッカー 6.2% , 少年サッカー 5.7%でした。
日本では運動に懐疑的であると言うと非難されかねません。しかし,世界的にみればかなりの反対があります。プロボクシングは最も危険なものです。その目的が相手に脳震盪を起こさせて倒すことだからです。毎年死者が出ています。アメリカンフットボールはまだ安全な方ですが,この成績です。ヘルメットをかぶらないラグビーで,首の骨を骨折し,首から下がマヒになるのは整形外科医なら経験することです。ひどくなれば,呼吸筋のマヒが生じ,一生人口呼吸器が必要です。私も,京大医学部の学生で一人実例を知っています。
トランポリンは高い所からバランスを崩して落下すると,同様に首の骨を折るので,アメリカでは禁止している州があると聞きます。
京都市の子供の国では,トランポリンの周りはわざわざコンクリートで固めています。ある集会でこのことを指摘しましたが,心配しすぎると私は変人扱いでした。
毎年の様に学校のプールで飛び込みの指導を行い,首の骨が折れて,どこかで訴訟になっています。
サッカーで相手とぶつかり脳震盪を起こすのはよくあります。さらに,ヘディングはかなりの衝撃を脳に与えるといわれています。微細な障害が出ることがあると考えられます。
もちろん,まったく安全な行為というものが存在しないという考えもあります。しかし,ものにはその程度というものがあり,ラグビーやボクシングは危険なほうだと考えています。私なら,できるだけ自分の子供にはこの様なスポーツはさせません。これを言うと,日本ではたいてい変人扱いですが----。
例えば卓球なら,上記の様な危険は比較的少ないと考えます。スポーツ指導者は十分その危険性を認識し,予防策をたてるべきです。スポーツといえば良い面ばかりみて,礼賛し,批判的だと変人扱いでは困ります。

2000.0101

/kawaiclinic
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