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鶏卵と耐性菌のはなし

サルモネラエンテリディチスによる食中毒が増加しています。WHOも再興感染症として注意を呼びかけています。再興感染症とは,昔良く起こった感染症で,抗生剤や衛生状態の改善で,ほぼなくなったかと思われていたものが,最近になって発生が増えてきたもので,抗生剤も効きにくくなっているものです。卵のサルモネラのうち70%以上が耐性菌だとの報告があります。

卵は1万個にひとつ位サルモネラに汚染されています。卵が作られる鳥の卵管のなかで汚染されています。つまり,卵のからの中に既に入っているので,外をいくら消毒しても無駄です。避ける唯一の方法は,加熱することで,生卵を食べてはいけません。肉も汚染されていることがあるので火を通しましょう。

ここまでは,素人記者の表面的新聞報道通りで,ホームページに載せる必要はありません。ここで,もう一歩だけ踏み込んでみましょう。

耐性菌はどこでできるかということです。医師攻撃はマスコミの得意なところです。耐性菌,抗生物質,使うのは医師,医師の不適切使用が原因,医師はけしからん。新聞お得意の単純な表面的三段論法です。これが今までの論説で,医師さえこれを信じ込まされてきました。では,なぜ卵の中で最初から耐性菌がいるのでしょうか。医師が養鶏場で投薬をしたのでしょうか。

耐性菌は多く先進国で発生してきました。先進国では大規模な工業的手法で養鶏が行われています。経済性追及,自由競争の合理的方法です。大規模な養鶏場では,日はささず,一日中電気の薄暗い照明の中で密集して育てられます。動物に衛生観念などありません。すぐに病気が拡がりやすい環境です。そこに,農薬業者,製薬業者のつけ込むすきがあります。病気が拡がり,たとえば1200万円の損害が出るところ,20万円の抗生物質で予防できるなら,業者は違法だと知っていても使用するでしょう。こうして,意識の低い素人の乱用により,耐性菌が発生しています。実際,ヨーロッパでも,食肉から微量の抗生物質がしばしば検出されています。こうして,鶏の体内で耐性菌が卵の中に始めから入っているのです。雛は海外から大量に輸入しています。

マスコミは耐性菌で事故が起こる度に,低俗な三段論法で医師を攻撃して満足していますが,農民や業者を非難することはありません。サイレントマジョリティーを非難することはタブーなのでしょう。医師を非難していれば大衆に受けるというものです。耐性菌で死者がでれば裁判官も被害者救済のため医師に責任を押し付けます。しかし,農産物に対する薬の乱用を世界的に考えて取り締まらないと被害は大きくなるばかりでしょう。根本問題はここにあるのです。スケープゴート捜しのマスコミの低俗さはまっぴらです。

追加  安くて美味しいのは魅力ですが,私ははまちの刺身は食べません。密集して飼育するので寄生虫や病害が多く,予防のために大量の薬品が使用されているからです。魚を囲う網も海草や貝が付着して,詰まらないように加工してあります。うろ覚えですが,有機スズ系の薬品が一時使われ,禁止になりました。有機スズ系は環境ホルモンの一種のはずです。(この部分うろ覚えで,間違っていたらすいません。)
たまごやブロイラーは似た事情にあります。


1998.06.01
1998.06.06 改訂
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