日本では営利企業の病院・診療所の開設は 認められていません｡この点の是非はあとで論じます｡日本では法律上認められていないということを強調しておきます｡日本で活動する以上、法律を守るのは当然というものです｡
繰り返しですが､営利企業の株式会社が病院や診療所は持てないのです｡
しかし､例外はあるのです｡既得権として会社が自身の従業員とその家族だけを対象に病院を持つことはできます｡新設の診療所にも､社員福利のため、社員限定の利用なら認められるのです｡社内医務室の拡張版というところです｡もちろん､一般人を診療できず､社員限定です｡旧国鉄は鉄道病院を持っていました｡松下幸之助は自身のために門真に松下病院を作り、最後はそこで迎えました｡その特別室の豪華さは想像にあまります｡余談ですが､多くの国立病院は陸軍病院等の転換です｡
経済界のトップでリーダートヨタも会社の病院を持っています｡経団連の会長も取り、政府諮問委員会にも奥田氏はたくさん名を連ねています｡経団連会長も再選されその威光は経済界にも政界にも及んでいるのです｡そういう方は､法律を守るのは当然というものです｡
そのトヨタ記念病院が､隣接して診療所を開き、わずか２日ですぐに閉鎖するというとんでもない失態を演じました｡個人でもすぐに閉鎖するなどとんでもない失態ですが､経済界に冠たる一流企業のすることではありません｡その経過がとんでもない不正の匂いがするのです｡
トヨタ病院は隣接して診療所を建てたのです｡そして､豊田市（よくぞ､こんな名前をつけたものだと思うのです｡ここにも企業のおごりが感じられます｡歴史・地域への冒涜です｡）へ診療所開設申請を出したのです｡当然、トヨタ病院の一部ですから､その対象はトヨタ社員のはずです｡
ところが､治療対象を一般人として市へ書類を提出したのです｡城下町の市の役人などどうにでもなると思い上がったのでしょう｡トヨタ広報部も「めどがついていた｡」と明言していたのです｡
社員対象の病院を持っている。次にその一部を増設する｡増設部分を一般人向けにする｡対象患者を区別できなくする｡結果として､営利企業は一般人対象の病院を持てる｡これが脱法行為でなくてなんなのでしょう｡小学生でも理解できる解りやすい法律違反なのです｡
さすが企業城下町､豊田市も開設の諮問委員会へそのまま提出したのです｡重箱の隅をつつくように、法的整合性を持ち出し、一般人には許可を与えないお役人様ですが､殿様企業には逆らえないのが城下町というものです｡
ここで、反対したのが医師会でした｡「設立目的に対象が一般人と記載の無い病院が､どうして一般人を対象にした診療所を持てるのか？営利企業の病院経営の突破口なのか？」というものです｡当然といえばあまりに当然です｡日本の法律で禁止されていることを、平然と市に申請するのが経済界に冠たるトヨタのすることなのです｡反論などできはしません｡そして､その診療所を開設直後に早々と閉鎖してしまったのです｡目的ははっきりしています｡脱法行為で会社が診療所を運営しようとしたが、失敗したから早々と閉鎖したとしか考えられません｡これがトヨタすることなのです｡悪徳パチンコ業者の開設失敗経緯とよく似たものです｡
相談してめどがついていたという、相手の社会保険事務局もトヨタの言いなりで、取材にも一切応じず口を閉ざしたままです｡天下の大企業トヨタは公的機関さえも言いなりにできるということです｡
もちろん､屁理屈をつけてトヨタは反論するのでしょうが､経済界のリーダー・トップ企業がすることではありません｡トップたるものは､疑いを招く行動をしないというのが倫理ですが､日本の経済界には通用しないのです｡トップ企業がこの程度なら､他の企業は推して知るべし､営利のためならなんでもするのが経団連というものです｡
最近は、経済合理性が最高倫理のように唱える向きがあります｡何でも会社経営にすれば上手くいくという主張です｡乾いた雑巾を絞るのがトヨタだといわれます｡それなら､３分診療を２分４０秒に短縮したら大成功です｡医療・福祉は経済効率のみで運営できるものではありません｡
経営トップに立つのはバカではできません。しかし､科学に対する洞察力・福祉に精通する・医学的判断ができるなどは､まったく別の事柄です｡
経営さえ上手くできれば何でもできると考えるのは、経済界の思い上がりです｡トップ企業でさえこの程度なのですから｡
２００３年８月１８日 トヨタクリニックの保険指定申請｡
８月２９日 愛知県地方社会保健医療協議会小委員会で 保険申請拒否
９月１日 保険の使えない自由診療診療所として トヨタクリニック開設。
９月２日 トヨタクリニック 保険医療機関申請取り下げ
９月３日 トヨタクリニック 閉鎖
2003.12.1
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河合 医院
初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹