恐ろしいマーガリン・植物性ショートニング


  

 

 

 


1998年より、このホームページで、マーガリンやクッキーの有害性を訴えてきました。しかし、日本の栄養学のレベルは低く、私も変人扱いされていました。文部省に抗議しても、無視されてきました。

私の論拠は1993年LANCET発表のNurses' Health Studyの解析です。ここではTrans fatの危険性がのべられています。Intake of trans fatty acids and risk of coronary heart disease among women. Willett WC Lancet. 1993 Mar 6;341(8845):581-5.

欧米でも浸透はなかなか進みませんでしたが、今年になってアメリカ政府は大々的に危険性キャンペーンに踏み出しました。河合 医院に遅れること7年です。

何事も、時代を先取りすると碌な事はありません。保健所で話すと、栄養士や所長から「先生の話は最新過ぎて理解できない。」と嫌味を言われ、抗議を受ける始末です。

さらに、脂肪関連の講演会で私が演者の大学教授にtrans型の有害性について質問したところ、演台で「それは何ですか?」と立ち往生され、助けに入った座長の京大の有名権威筋の教授も「よく解りません。たぶん影響はきわめて少ないでしょう。」との事でした。

日本の医学会ではほとんど無視されつづけている議論です。

私のページを見て、教育委員会に意見を言った方もおられますが、「そんなことは厚生省も言っていない。」だの、栄養学的に証明されていないなどと、クレーマー扱いでした。もちろん、日本の学界や文部省・厚生労働省が遅れているのであり、正しいのは当方なのですが・・・。

アメリカの政府は5年ごとに食事のガイドラインを改定しています。その最新号にはわざわざ斜字でtrans fatの危険性が記載され、できるだけ摂取しないように呼びかけているのです。改定の中心的ポイントでさえあります。   Dietary Guidelines for Americans 2005 http://www.health.gov/dietaryguidelines/dga2005/document/

さらに、事の重大性から、2006年1月1日から、すべての加工食品にtrans fatの含有量を表示させるという強制手段に出たのです。アメリカ政府の意気込みが伝わってきます。それに比べ日本の現状は情けないものです。

  復習しておきます。私の主張は、マーガリン・植物性ショートニングは合成されるときに自然界にはほとんど存在しないtrans型の脂肪酸が生成される。これは、天然型のcis型と違い代謝されにくく、健康に害がある。したがって、給食のマーガリンや、クッキー・ケーキ・パン・フライドポテト・ポテトチップ・外食が増えると健康被害が増えるという主張です。これは、アメリカのナースの詳細な食事の分析で証明されたのです。そして、アメリカ政府も無視できなくなったのです。

なお、天然にもtrans脂肪は存在します。主に反芻類の胃の中で発酵によりごく少量合成されるので、牛や羊の油に少量混在します。しかし、本来天然界で植物が合成する脂肪酸はcis型のみです。脂肪酸はほとんど変化せず動物体内に取り込まれます。

液体の油を固形のマーガリンに変化させるには水素添加が必要です。このとき、副産物?としてtrans型ができるのです。

アメリカ政府によれば、trans型は悪玉コレステロールのLDLコレステロールを増加させ、善玉のHDLコレステロールを減少させるので、さらに中性脂肪やリポプロテインaも増え、悪影響を及ぼします。心筋梗塞・動脈硬化を増やすというのです。これを、一般人にも広く周知徹底させるのが目的なのです。

これらの業績は、ハーバード大学のWillett WCらが中心的に行ってきたのですが、たぶん医師ではなく、栄養学の教授のようです。ここいらあたりが、日本の医学界ではその理論がほとんど無視されてきた理由でしょうか。日本の栄養学学会や厚生省も遅れており、気がついていないようです。

彼等のグループの1997年の推計で、アメリカでは少なくとも年間30000人はtrans脂肪で余計に心臓病で死んでいるそうです。Am J Clin Nutr. 1997 Oct;66(4 Suppl):1006S-1010S. Health effects of trans fatty acids. Ascherio A, Willett WC

女性ではトランス型脂肪酸を置き換えると、心臓病での死亡率が53%減少するという計算さえあります。権威ある医学雑誌の論文であり、軽薄マスコミの記事ではありません。the replacement of 2 percent of energy from trans fat with energy from unhydrogenated, unsaturated fats would reduce risk by 53 percent. Dietary fat intake and the risk of coronary heart disease in women.Hu FB, Stampfer MJ, Manson JE, Rimm E, Colditz GA, Rosner BA, Hennekens CH, Willett WC. N Engl J Med. 1997 Nov 20;337(21):1491-9.(いままで無視されてきた論文ですが、今後注目を集めるでしょう・・・。)

もちろん、マーガリンが悪いといって純正バターを大量に取ればやはりコレステロールは増えかねません。できるだけ脂肪を減らさなくてはいけませんが、マーガリンを代用するのは危険です。

代替すべきは、魚の油と加工しない植物油(それも不飽和脂肪酸)です。禁煙は言うまでもありません。魚の油にtrans型が無いのは重要です。

心配なのは、給食でマーガリンを強制されている子供たちの健康です。学校給食は、河合 医院やアメリカと正反対に事態は進んでいるのです。これでは毎年数万人規模で心臓死が増えるばかりです。

Major Food Sources of Trans Fat for American Adults
(Average Daily Trans Fat Intake is 5.8 Grams or 2.6 Percent of Calories)

from United States Department of Health and Human Service
Chart showing major food sources of trans fat for American adults.

horizontal rule

2005.3.1
http://www.geocities.com/kawaiclinic/
〒6050842 京都市東山区六波羅三盛町170 
河合 医院

初級システムアドミニストレーター 河合 尚樹

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日本では長年無視をしてきた理論です。脂質学会や日本動脈学会も無視してきました。ところが、昨年からDietary guidelines for Americans 2005でtrans fatが載りそうだというと、いっせいにtrans transと大騒ぎしています。日本のガイドラインには全く触れられていないのにです。重箱の隅の理論をやりすぎて、大元の部分を見過ごしてきたのです。地道なフィールドワークをできなかったつけが回ってきたのでしょう。
今後の動脈硬化学会・脂質学会の混乱はみものです。数年大騒ぎになるでしょう。糖尿病学会・高血圧学会等にも影響するでしょう。

京都市の教育委員会には意見しておきましたから、京都では今後大丈夫でしょう。