午後4:30 吸う。10分くらいすると覚醒というよりソワソワとじっとしていられない感じ。 5:15 打ち合わせで喋りまくり、相手を圧倒して3本の企画を通す。 6:00 これまで面倒臭がって手をつけなかった電話や仕事相手への手紙の用事を済ます。受け答えもハキハキとして絶好調! 8:00 食事をしながらの会議があったが、まったく食欲なし。他人の話がまどろっこしく感じたり、違うと思った提案にしつこく食ってかかり、変な目で見られるが、変だという自覚はなし。 10:00 結局他の出席者とケンカをして退席し、帰宅しようとタクシーに乗る。しかし、渋滞がまどろっこしくて途中で降り、自宅まで30分かけて歩く。 11:00 自宅着。風呂に入るが眠気がなく、しかたなく靴を全部ピカピカに磨く。 1:00 まったく眠気がない。少し気味が悪い。趣味の「詰め碁」をする。 2:00 部屋のなかを隅から隅まで掃除。何かせずにはいられないような心境。 3:00 会社の今後の予想売り上げの計算を始める。意味もなく5年後まで計算する。 5:00 少しでも眠らなくちゃと思い、ビデオを見ながらワインを開ける。 6:00 ワインを1本飲み干すが酔いもせず、眠くなるどころかますます目が冴える。このままー生眠れないんじゃないかと不安になりつつ眠るのを諦め、新聞を取ってきて、隅から隅まで熟読する。 7:30 今度は猛烈な勢いで本を読み始める。フランス文学関係の本を一気に読破。 8:30 家を出て出社する。眠気はまったくなく、相変わらず電話にコピーにと仕事がどんどん片づく。 12:00 ようやく少しだけお腹が空いたような気がして、弁当を食べる。昨日の午後からアルコールしか口にしていないが、これまでまったく空腹を感じなかった。 1:00 会議が始まると同時に猛烈な眠気が襲ってきた。ようやくクスリが切れてきた感じがする。 |
(1)3日に1本―思いついた時にやるという感じ。この量と間隔を守っていれば耐性はできにくく、量を増やさねばならなくなることもそれほどない。いつやっても大いに効く状態が保てる。まだ「ハマっている」とは言えない。 (2)毎日1本―これはすでに「ハマっている」。だんだん耐性ができてきて、1週間、2週間と続けているうちに3本、5本、7本と量を増やさないと効かなくなってくる。ただしこのレベルなら、2週間も休めばまた1本からでも効くようになる。 (3)毎日10本―このあたりが常習者の注射での1回の通常使用量(20mg程度)と言われる。この段階では寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなって途中で目が覚めたりと、覚醒障害が表れてくることもある。ここからすっかり耐性を戻すには最低1ヵ月の断薬が必要。 (4)毎日30本―1日に何度もやるようになる。シラフの時間よりクスリが効いている時間のほうが長くなってくるが、ここがひとつの大きな通過点だ。それまでは覚醒剤を利用していたはずだったのが、このあたりからは逆に覚醒剤を中心に生活が回り始める。完全に「依存」の段階に入ったと言えるだろう。急にやめれば、その直後から2〜3日めあたりにかけて、前述したような禁断症状が時々出てくるようになる。 (5)毎日60本―つまり1週間で約1g。起きているほとんどの時間は覚醒剤をやっているようになる。そしてあまり気づかれないが、実はここが覚醒剤が裏の顔を見せて微笑む大きなターニングポイントなのだ。このレベルになると、やっても覚醒するというよりは、フラフラした気持ちよさを味わうようになってくる。もう”覚醒”剤ではなくなってくるのだ。体は重くなり、逆にじっと動かなくなってきて、部屋に醸もりがちになる。つまりここからが本格的に危なくなってくるわけだ。それでもまだ通常の生活時間を守ることはできるが、早い人ではこのあなりから幻覚・妄想が出てくる。大量の結晶をいちいち粉にするのも面倒になり、あぶったり注射器で打つなり しだす。もう5本くらい吸っても何も感じない。 (6)2日で1g―だんだん起きている時間が48時間、72時間と伸びていき、一度寝ると1日や2日は眠っているという、いわゆる「めちゃ打ち→つぶれ」とを繰り返すようになる。効いている時でも、だんだん「あいつが笑ってる」といった被害妄想や「つけられてる」という追跡妄想、または視線恐怖が出てくることもあり、もう以前のような気持ちよさはなくなってくる。やって普通、やらないと禁断症状というドロ沼にハマることもある。買い方も一度に10g20gといった単位になってきて、金銭面でも困り始める。それでもこの量をやりつつ、毎日5〜6時間も眠り、食事もちゃんと取っていた強者もいるのだが。筆者が話を聞いた人のなかにも、このレベルまで行ってもなんとか普通にやっている人は何人かいた。 (7)毎日1g以上―ここまでくるとさすがに簡単にはもとに戻れない。そもそもカネやヒマがなくなったり、幻覚を見てリタイヤしてしまったりして、なかなかこのレベルまでいけない。 ここではすでに、幻覚・妄想とは背中合わせである。思い切ってやめるなら、辛い禁断症状に耐え、それっきりで一生やらないくらいの一大決心が必要だ。それほど強烈な依存に陥っている。これ以上の量となると、さすがにほとんど話にも聞かないし、記録にもあまりない。筆者はひとりだけこのレベルまでいった人に会えたが、彼はなんと6日間も眠らずにやり続けた末に、幻覚こそ見なかったものの心臓が激しく痛み「死ぬ」と直感して、泣きながらすべてのモノを便所 に流し、それ以来一切やめてしまったのだと言う。ちなみに彼は最後まで「あぶり」だった。 |