「マボロシオトコ」

マボロシオトコ キミは過去から未来まで

この夜の部屋に立寄って 笑って帰ってゆくオトコ

「なんなのか」僕の問いに 答えもせず 去る オトコ


ひとり 闇から闇へと 朝をこえ 昼を堪えぬいて

ひらり ひらり 駆けるオトコ

どこから来て どこにゆくのか


何を解っているから笑っているのだろう

何も 知らないのか


暗く 夜の底から 海をこえ 渚を蹴って

手を振って また前を見つめて 走るひと


ぼくにはキミがなんだかわかるような気がするよ

マボロシオトコ


眠る前に 行く前に ひとつききたいことがある


1996 夏

POEMS LIST

[a modest shellwork]