「ひとに すてきなひとにU」

あなたは知るだろう

そのやせたからだを見ながらも

うつくしいものを

あるいは あなたのとても好きなものを

思い出を


それは朽ちてゆき 腐ってゆくものかもしれない

すくなくとも私にしたって

固いダイヤのような微笑など

持ち続けられるわけもない


語るならば

それは あなたをより美しくする

それは 鏡の前のあなたを

人々の前の、中の、あなたを


くるしまぎれに あなたは 背中を掻き

あなたの命に 脅かされる

悟るように あなたは眠り

ひそやかな 星々のうずのなかで 生きる


たとえばひとつの数があなたを救い

吊り下げられた瞳の中のひかりが

たとえば誰れかを ほほえませ 輝かせ

カクテルの様に あなたは

暗黒(くらやみ)すら 包んでしまう


待つことの あるいは 行くことの

その響きだけを その風の匂いを

あなたは知る その美しい髪の全てで


さざめきの それは夏の夜

なつかしい影を夢見て

あなたは瞳を閉じる


1996 5 21


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