鹿が現れた日

 
  森の中には、時として信じられない出来事が起こる事があります。信じるか否かはあなたの自由です。

  その日は、長男のあるコンテスト(電池を使った機械工作)の発表の日でした。

  裏庭というより、横庭から前庭に鹿がいっぺんに5頭も現れたのです。季節は2月でした。まずそうなシャクナゲの葉を食べていました。しばらく、道路際のやはり、シャクナゲの葉を食べ、そのうち1頭が道路を挟んで斜め前の家の前庭方面に移動すると、残りの4頭もそれに続いて移動を始めます。長年住んでいても、鹿が我が家にやってきた事も無ければ、あの日以来1頭も現れていません。確かに、近くの森が、アメリカの好景気を反映してどんどん減り、有る所は住宅が、ある所は、介護付き老人ホームになったり、また大きな店に変わってしまっている為、鹿達の住み処が減っているのは事実です。

   その日もいつものように長男を学校に迎えに行き、彼が車に乗ると同時に「お母さん、5当だったよ。」 「ええっ、5頭?・・5頭・・・・鹿が5頭!!!!?」 頭がくるくる回り何を、息子が言っているのか理解に苦しんでいるのもつかの間、コンテストの結果を話していると解るまで数秒かかってしまいました。鹿が5頭現れた事を話すと、彼は信じようとしません。今まで1度もそのような事がなかったのですから。もし、彼が5位だった・・・と言ってくれれば、こんな事はなかったのでしょう。1-5位のいずれかに入るという事は2週間前に分かっていたので、その2週間の期待と、ハラハラの連続は我がファミリー始まって以来、又この先あるかどうか分かりません。それと言うのも、これはアメリカ全土の子供を対象に、ある企業主催のコンテストで、もし1,2位だったら全国Netのテレビ出演、賞金20、000ドル(1位)副賞コンピューター1台(1位)だったからです。1,2位は1人づつで、5位は全国で50人もいるのです。彼の、賞金は200ドルでした。もし、1位だったら・・・・と色々思い描いていた息子にとっては、チョッピリがっかりした一日だったかも知れません。

  「鹿が1頭だったらよかったね。」とは、友人の談。

あの、鹿達は一体何処へ行ったのか不思議な気持ちは暫く、続きまし
た。まさに、神の御告げのようで・・・・・・・・・。                                 9/9/1998


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