廃 棄 物 汚 染


  平成5年度の日本の産業廃棄物排出総量は、3億9千7百万トンである。これを業種別でみると、最も多いのは建設業で8千2百万トンで建設業(20.6%)、次いで農業の7千6百万トン(19.0)。廃棄物種類別でみると、汚泥1億8千万トン、動物のふん尿が7千6百万トン(19.0)となっている。
 ここで、農業から排出される廃棄物は動物のふん尿のみがカウントされているなかで、如何に排出量として大きいかが判る。

 過去にあっては、こうした畜産業は農業と対に経営している形態が多かったが、鶏と豚は牛の牧草といったように餌料上において農産物との直接的関係が希薄であることから、独立した経営形態が多い。
 よって、鶏及び豚の糞尿は廃棄物としてその行き場を探さなければならないが、鶏糞は有機肥料として流通しているものの、豚に関しては殆どが堆肥化されておらず、これらが廃棄物として適正に処理されないままに河川や地下水の汚染につながるケースが考えられる。
 また、牛にあっては、一部で堆肥化されているものの、いわゆる牧場に放置されたままの状態であり、これらが降雨によって河川に流入したり地下水へ浸透したりすることがある。(一般に、牧場周辺の河川の有機性は高い傾向にあるとされている)
 今年、北海道の水産加工場から出荷された「イクラ」のO-157事件では、放牧地のふん尿が地下水を汚染し、これを使っていたのが根本的な原因でないかとも考えられている。
 また、酪農地域の農民や住民は、原則として地下水を飲用しないとされている。

不法投棄による汚染

 我が国における廃棄物不法投棄検挙件数は1,526件/年(平成9年度版警察白書)で、うち一般廃棄物1,238件(81.1%)、産業廃棄物288件(18.8%)である。しかし、この数字は検挙数であり、不法投棄者不明の数は含まれていないと考えられる。
 廃棄物の不法投棄における大きな問題は、これら廃棄物は漏出する有害物質(重金属、油類、他)による土壌汚染、地下水汚染である。
 また、不法投棄された廃棄物は不法投棄者の責任によって修復されることとなっており、不法投棄者が不明の場合には地方自治体がこれを修復することとなっている。しかし、地方自治体では、これら不法投棄される廃棄物の修復予算を事前計上しているケースは希で、遅々として修復が進まないのが現状である。まして、これら廃棄物が土壌汚染を来しているかの調査、さらには、土壌汚染の修復までは殆ど手が及ばないのが現状である。
 こうした状況で危惧されることは、廃棄物の不法投棄による土壌汚染や地下水汚染への対策が講じられないばかりか、その実態さえも周辺住民に公表されないことである。過去にあっては、「周辺住民に内緒で、専門知識もない土建屋に土壌の回収をさせたり」、「公表すると地方自治体が対応しなければならないが、予算がないので敢えて情報伏せていたり」している事例があり、こうした事態が今も無いとは云えないことである。

 一方厚生省は、廃掃法の改正により、産業廃棄物適正処理推進センターを設け、投棄者不明または資力不足の不法投棄の現状回復に3/4の補助をする制度を設けた。しかし、土壌汚染をも来した状況まで対応するものであるか?さらに、地元負担分を当該地方自治体が負担しきれるか?といった問題については、今後も注意を払う必要がある。

                               以上。
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